伊東市・田久保市長の改訂版経歴は不正確

プロ作家の記事

共同通信のニュースで、「伊東市のホームページの市長のプロフィールで「東洋大学法学部卒」が削除されて、「伊東城ヶ崎高校卒」が記載されたと報じられました。
「大学に入学しても、卒業していないのならば高卒」という考え方は理解できますし、まぁ見方によってはそうなのですが、いちおう学歴に関しての本を書いてきた私にすれば、ここの考え方は全くもってナンセンスでして、田久保市長は学歴を書くのなら、きちんと書いてほしいところです。

伊東市ホームページ「田久保市長のプロフィール」

政治家になるための資格・学歴は存在しない

政治家における学歴は、「運転免許」とか「医師」のような業務独占資格(その資格を持っていなければ、当該業務を行ってはならない)ではありせん。中卒だろうと国会議員になれるし、博士を持っていても、選挙で当選しなければなれません。まぁ、25歳以上とか30歳以上とか、国籍・居住実態・公民権停止になっていないなどの基本的な条件は言及するまでもありません。

そして政治家においては公職選挙法上の選挙に立候補する際に、真実に反する身分の表示をした場合は罰せられると表示があります。もしこの構成要件に該当し、有罪となれば失職するという建前があります。

(氏名等の虚偽表示罪)
第235条の5 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて真実に反する氏名、名称又は身分の表示をして郵便等、電報、電話又はインターネット等を利用する方法により通信をした者は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。

公職選挙法

田久保市長について、一連の報道では立候補時に作成する「選挙公報」等に「東洋大卒」を掲載した訳ではありせん。公的な書類といえば、当選後に伊東市の広報やホームページに掲載したというだけです。一部報道では、立候補時にマスコミに伝えたという情報もありますが、ここは微妙なので、大きな問題にはなっていません。

明々白々な学歴詐称とすることもできないからこそ、大騒ぎになりました。日本の大学は入試は難しいけれど、卒業はさほと難しくないから入学は卒業の価値があるという意見もあります。
大卒ではないのに「大卒」と書いたことは確かに真実に反する身分の表示だが、立候補時には表明していないから公選法違反ではないという意見もあれば、当選後とはいえ公の文書に掲載するのは、市長としての資質に問題があるのではないかという意見もあります。
ここまでの議論では私の意見は、学歴詐称ではないから、辞職の必要はないでした。

ただ、議会に対して、卒業証書をチラ見せしたという事実は、議会軽視ともいえるため、これについては大いに批判されるべきです。

田久保氏学歴、高卒と掲載 伊東市、ホームページ更新

 静岡県伊東市は23日までに、市ホームページの田久保真紀市長のプロフィルを更新し、最終学歴を「静岡県立伊東城ケ崎高等学校普通科卒業」と掲載した。田久保氏が自身の学歴詐称疑惑を受けて新設を発表し、1日に施行された市長職の経歴に関する要領に基づいた対応で、更新は20日付。

 要領では、市長就任日から原則21日以内に、最終学歴の学歴証明書や職歴証明書などを担当課に提出すると定めている。施行段階で既に市長在任中の田久保氏は、今月21日までに提出を求められていた。市広報誌などで「東洋大卒」と自身のプロフィルを紹介したが、実際には除籍となっていた。

 田久保氏は不信任決議可決に対抗する形で、市議会を解散。19日投開票の市議選(定数20)では、再度の決議案に賛成意向の19人が当選した。31日招集の臨時議会で決議案が再可決される見通しで、田久保氏の失職は不可避の情勢となっている。

共同通信の記事より引用

大学を「中退」したら、「高卒」なのか問題

今回、田久保市長の学歴について、判明していることは、時系列でいうとこんな感じです。

1.高校を卒業
2.東洋大学法学部に合格・入学
3.卒業に必要な単位の半分くらいを修得済み(学校教育法上の卒業要件は124単位なので、60単位程度か)
4.大学側は田久保氏を除籍した

「大学へ入っても、卒業していないのだから高卒だ」という指摘は正しくもありますが、我が国の場合、難関大学の入試に合格することが一種のステータスとなっている部分があります。
大橋巨泉さんは早稲田大学第一政治経済学部新聞学科中退、タモリさんは早稲田大学第二文学部西洋哲学専修を除籍されたことが有名です。爆笑問題の太田光さんと田中裕二さんはいずれも日本大学芸術学部中退です。
私の尊敬する弁護士さん(故人・大学教授)は、東京大学在学中に司法試験に合格し、すぐに司法修習を受けようとしたら、当時は職務専念義務のために大学の在学を許されず、中退して修習に入り、そのまま裁判官になったという経歴の持ち主でした。そして大学教授時代のプロフィールは東京大学中退でした。
こう考えると、田久保市長の学歴について、「卒業できなかったのだから高卒」というのもおかしくなります。

「中退」と「除籍」はいったい何を指すのか

「田久保市長は学費を支払わずに除籍となったのだから高卒だ」という言説がありますが、これも違います。
例えばこの私。慶應義塾大学経済学部に在籍していましたが、学費を支払わなかったことを理由に除籍されています。じゃ、慶應で修得した単位は全てゼロになるのかと思っていたら、成績証明書にはきちんと単位が記されていて、その単位を根拠に学位授与機構で学士(教育学)を取りましたから、在学期間も単位も有効で、証明書には「中退」と表記されていました。
つまり、除籍というのは、退学させるための処分の一つですが、退学後の処遇はただの「中退」です。在学期間や修得単位は一生有効なので、私は「慶應大学中退」を名乗ることができます。
仮に私が1単位も修得していなかったとしても、入学金や授業料を支払って入学し、たった1日でも在学期間が存するのなら、退学後は「中退」を名乗れます。だって「中退」は単位を取ったか否かを意味する言葉ではありませんから。

大学・短大の中退は学歴として使えるし、使うべき

例えば4年制の通信制大学に2年間在学し、62単位を修得した場合。
卒業はしていないし、学士を授与された訳でもない人は、単なる高卒でしかありませんが、社会科学に属する科目(法学・社会学・経営学等々の)を1科目でも修得していれば、税理士試験の税法科目の受験資格を有することになります。

国税庁 税理士試験受験資格の概要より転載

なお、例えば田久保市長が、わずか10単位しか履修していなかったとしても、在学期間が4年もあったのであれば、例えば放送大学の3年次に編入することができます。そこから114単位の履修は必要ですが、2年で114単位は不可能ではありません。
つまり、大学というシステムは、単位を取ることもさることながら、ただ在学期間があることも含めて意味があり、中退後も活用できるのです。
したがって、田久保市長の学歴表記は「東洋大学中退」が正しいと思います。

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