
以前、学費ナビに掲載した記事を読んで、「今の時代、専門学校へ行って何になるんですか?」という問い合わせをいただいたことがあります。
この手の問い合わせをしてくるのは、大学と専門学校の区別がついていない若者に多いのですが、まぁ、それは我が国の教育制度がツギハギだらけのもので、いまいち理解が追いついていないのだと思われます。
専修学校専門課程を「専門学校」と呼ぶ
専門学校というのは、「専修学校」という括りの学校種別の中にある、一般課程・高等課程・専門課程のうちの「専門課程」のことを指します。専門学校の修業年限は1年から4年まであり、ごく一般的な認識では2年制のものが多いのですが、医療系の資格が取れる課程では3年制もあるし、高度専門士が取得できる4年制のものまであります。
似たような名前の学校に、「高等専門学校」、略して「高専」と呼ばれる学校がありますが、これは修業年限的には3年制の高等学校と2年制の短期大学が合わさって5年制の課程となった学校で、主に国立・工業系の学校を指します。高専は中学卒業後に進学する、技術系のエリート養成というイメージがありますが、この記事の専門学校とは別のものとなります。
専門学校は学力試験による選抜を行わないところが多い
さて、かつて4年制大学への進学が難しかった時代は、専門学校といえども学力試験による入試が行われていた時期がありましたが、少子高齢化と共に多くの学校では書類選考と面接のみで入学を許可するところが増えました。文系の学科・コースであれば、高卒(大学入学資格保有者)であれば、誰でも入学させるのではないかというくらい、入学難易度は低いところです。
しかし、専門学校は職業人を養成するという使命がありますので、職業に直結するカリキュラムを持つのが基本です。よって、就職率を上げ、就職先となる企業が要求する人材を育成するため、資格取得や即戦力に近づくことができるような授業を行うところが多いとされています。
1999年から大学編入資格を付与
かつて進学先に専門学校を選んだ人は、大卒資格が欲しければ、専門学校とは別に大学へ通う必要がありました。2年制の専門学校修了後に4年制の大学へ行くと、順当に卒業したとしても6年が必要でした。当時、2年制の短大を卒業した人は4年制大学の3年次に編入できるという制度がありましたが、専門学校はそれができないため、専門学校と大学の両方に同時に在籍して無理に4年で大卒を目指すという人もいたくらいです。
ところが、1999年から、専門学校修了者にも大学編入資格が付与されました。具体的には2年制の学校で総授業時数が1700時間以上の学校なら3年次編入、3年制の学校で総授業時数が2550時間以上の学校なら4年次編入が可能になったのです。
学校名にこだわらないなら専門学校+通信制大学がトク
4年制大学へ行くためには入試が必要です。一般選抜でなくとも、総合型選抜、学校推薦型選抜には高校における相応の成績が必要です。しかし、一般的な文系の2年制の専門学校なら、学力による選抜は不要です。専門学校の多くは、大小様々な資格取得をカリキュラムに採り入れています。例えば大原簿記学校なら簿記、立志舎の東京IT会計専門学校ならIT関連の資格、美容専門学校なら美容師資格の他にネイル技能や介護職の初任者研修資格など、目指す職業の関連資格を得ることが可能です。そしてその専門学校を通じて就職ができた上で、やる気があるなら通信制大学に在学することで、働きながら大卒(学士)を目指すことができます。
大学ランキングにとらわれないマルチ資格ホルダーを目指せ
入試業界では、お約束のように語られるMARCHや日東駒専といった、偏差値で区切った大学ランキングのようなものがあります。確かに、明治大学卒とか、中央大学卒、日本大学卒という学歴は相応の輝きはありますが、例えば経済学部・経営学部・商学部などを卒業して彼らが得られる資格は「学士」です。
しかし、専門学校で会計関連のコースを修了した人は、先ほど述べた専門学校修了という学歴に加え、簿記2級とか、ファイナンシャルプランナーとか、税理士試験の一部科目合格等々、何らかの資格を目指します。その上で、通信制大学の3年次に編入し、学士を取ってしまえば、実は普通の大卒よりもスペックが高い人としてアピールできると思うのです。
大学は出たけれど、資格は車の免許しかありませんって人、多いじゃないですか。お恥ずかしながら、筆者はこれに当たります。
人事の人に聞けば、勉強の得意不得意は大学名で計れるけれど、仕事で能動的に動けるか否かとか、人柄の良し悪しは雇ってみなければわからないのが普通です。そんな時、例えば不動産業なら「宅建士」、ホテル業なら「英検やTOEIC」等々、仕事に役立つかもしれない資格をいくつか取っておくと、それが採用の鍵になるというのです。
私が取材したケースでは、服飾系の専門学校を修了後、放送大学に3年次編入し、早々に卒業要件となる単位を修得し、空いた時間で簿記検定3級を目指した女性がいます。彼女は3級合格後、知識が新鮮なうちにと2級にも合格したところ、税理士法人への就職が決まりました。
筆者は、国家資格ではなく、学位をいくつも持っていますが、法学部卒で得られる学士(法学)だけで美容学校の関係法規の講師として採用されたし、4年次編入で早々に取得した経営学の学士(日本福祉大学の通信課程)を使い、運営管理の講師もしています。学位そのものは国家資格ではありませんが、美容師養成施設の講師資格と考えると、事実上の国家資格ととらえることができます。
つまり、学歴に加え、仕事に使えそうな資格を持っておくと、即戦力として採用される可能性があるということです。
専門学校は職業資格と大学2年次修了資格(3年次編入資格)を同時に取れるところ
一般には「誰もが4年制大学へ行ける時代の専門学校進学は最底辺の進学行動」と思われがちな専門学校進学ですが、資格が取れる上に大学2年までを終えたことにしてくれる進学先と割り切れる人の合理的な行動といえます。
「学費相当分は奨学金を借りて4年制大学」だと500万円。でも、それが専門学校ならその半額で済みます。重たい貸与型奨学金よりも、専門学校の方がお得だと思いませんか。
入試を克服するために予備校へ通い、MARCHや日東駒専を目指すのも悪くはありません。しかし、捻出する学費と実際に得られる資格や就職機会を考えたら、専門学校の方が得ではないかというお話しです。



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